7月7日から21日にかけて、奈良・東生駒キャンパス図書館において、貴重書展「写本からインキュナブラ、活版印刷」を開催しました。昨年、大学創立50周年を記念して実施した貴重書展「谷崎潤一郎 耽美の世界~肉筆・稀覯本を中心に~」、「源氏物語 雅の世界」に続く、図書館主催行事の第3弾です。
本貴重書展では、法学部の飛世昭裕教授の協力で、13世紀から17世紀までに作られた写本零葉、インキュナブラのほか、活版印刷の『ローマ法大全』の34点の貴重書を公開しました。
ルネッサンス期に活版印刷術が登場するまで、ヨーロッパの書物は、羊皮紙に書写された写本が主流でした。修道院に設置された写本室で、修道士たちがキリスト教の宗教書やラテン語の文献を複写して、書物は制作されていたのです。今回の貴重書展では、そのような写本の零葉と、インキュナブラ(活版印刷黎明期である1500年までにつくられた印刷物)と、宗教書や哲学書とともに当時の学問の中心であった『ローマ法大全』を出展しました。また、「西洋の本の歴史」と題して、ヨーロッパにおける書物の変遷を解説するパネル展示も行いました。
期間中は、一般の方々だけでなく、宗教学や図書館学の研究者や製本、装丁を手がける方などにご来館いただいたほか、日本文化学科の学生が授業の一環で見学をするなど、幅広いジャンルの方々に貴重書展をお楽しみいただきました。なかなか目にすることのない洋古書を見るチャンスとあって、どの見学者も細部まで熱心に鑑賞されていました。また、「短期間の展示がもったいない」という感想も多数いただき、充実した展示内容に各所より高評価を得ました。
7月18日には、飛世教授が講師の公開講座「ローマ法大全と中世写本から活版印刷までの文字の歴史」を図書館2階のシーキューブで開催しました。“貴重書とともに楽しむ公開講座”として、講義と展示品解説とを行う贅沢なスタイルの公開講座も、これで3回目となります。今回の講座は、めったに触ることのできない羊皮紙や活版印刷本を直接手にすることのできる機会とあってか、定員の3倍近くもの方々からお申込みをいただきました。
当日参加したのは、抽選で選ばれた10代から70代の34名。飛世教授が解説する「ローマ法」からルネッサンス期の大学の話に、皆熱心に耳を傾けていました。講義後には、実際の展示品に手に取り、「洋古書はずっしりとしている」「羊皮紙って思っていた以上に薄い」など、少し興奮した面持ちで、感想を言い合っていました。「2回目があれば、必ず参加したい」という声も聞かれるなど、非常に満足度の高い講座となったようです。
帝塚山大学図書館は、学生・教職員だけでなく、地域に愛される「生涯学習機関」として、今後もさまざまな企画を実施していく所存です。
今秋は、奈良・学園前キャンパス図書館では初めてとなる貴重書展の開催も計画しています。
これからの図書館の活動に、ぜひご注目ください。